「天の王国」


ゼロスが初めてうすら笑いを消し、歓喜の表情を浮かべた。

だが。
それがリナの目に映ったのは、一瞬のことだった。
空から落ちた時より、試掘穴に落ちた時より、はるかに膨大で激烈な光がペンダントから溢れ出したからだ。
 
「!」
 
あまりの眩しさに目がくらむ。
奇妙なことに、光は突然収束し始めた。
一条の閃光に姿を変える。
リナが気づいた。
ゼロスも気づいた。
まるで、赤い糸のように。
それは南西の方角に向けて、石のドームの天井を貫いて光っていた。
 
びょおっっ!!!
 
光が天井に到達すると同時に、すさまじい風が生まれた。
室内をびょうびょうと風鳴りが包む。
リナを中心に、小さな竜巻きが渦巻いていた。
「なんなの、一体っ・・・・」
呟くリナ。
輝きと風の嵐に囲まれ、リナの髪も巻き上がる。
ペンダントは灼熱の塊のように、赤光を放ち続けている。
「!これはっ・・・」
ゼロスが一歩よろめいた。壊れた土人形の細かなかけらが舞い上がり、ぴしぴしと打ちつけてくる。
「!」
ゼロスが自分から離れた!
リナはペンダントの光から目を守るように手をかざした。
逃げるなら、今しかない。
「!お待ちなさい、リナさん!」
リナはくるっと身を翻し、部屋から飛び出した。
と同時に、ペンダントからほとばしる光は、弱まろうとしていた。
 
 
 
 
 
どきどきと心臓の音が痛いくらいだった。
なのに足並みは水中を泳ぐように遅くて、これは現実のでき事なのか、それとも悪夢の中なのかと疑ってしまう。
リナはようやく階段にたどり着き、一段目に足をかけた。
ペンダントの光はちかちかと瞬きだした。
もう目くらましには使えなさそうだ。
 
壁に手をかけた時、背後から声がかかった。
「リナさん。それをこちらに渡しなさい。」
ゼロスだった。
「素晴らしい。思いだしたのですね、封印の言葉を。」
・・・封印の、言葉?
母から教わったただのおまじないが、封印の言葉?
リナの頭の中を、ゼロスの声が引っ掻き回す。
「それは無知の者が持っていても、仕方のないおもちゃですよ。
僕と一緒にいらっしゃい。
その石の本当の使い道を、僕が教えてあげます。」
「・・・・?」
階段はこんなに一段一段が高かっただろうか?
駆け上がっているつもりなのに、どうしてまだ、階上につかないのだろう?
そして何故、ゼロスの声は遠ざからず、一定の音で聞こえてくるのだろう?
 
かつん、かつん、と規則正しい靴音が後からついてきた。
走って追いかけてきている訳でもないのに、異様なプレッシャーが感じられる。
逃げ出すことなど不可能だと。
思っているから、彼は慌てないのだろうか?
 
・・・・いや。
リナは確信した。
彼は楽しんでいるのだ。
弄んでいるのだ。
無力な自分を。
そして、その無力な自分を意のままに操れる、自分の力を。
 
「・・・・・!」
リナの頭に、かあっと血が昇った。
誰でもない。
ただ翻弄されているだけの、自分に腹が立って。
ペンダントをぎゅっと握り締める。
熱くて触れないかと思っていたが、熱は感じなかった。
ただ、何かがどくんと脈打った気がした。
 
「リナさん。
僕と一緒に行きましょう。
伝説の空翔ける城、天の王国、ラピュタへ!」
「・・・・・!?」
ラピュタ・・・・!?
 

「リナっっ!」

 

階段の上から突然名前を呼ばれて、リナは足を止めた。
ゼロスを振り返るのはやめ、顔を進行方向へと向ける。
「リナ!」

リナは耳を疑った。
まさか。そんなはずはない。
だってあの時、諦めて帰ったはず。
もう関係ないはずだと。
「リナ!いるのか!?」

嘘でしょ・・・・
「ガウリイ!?」
 
その時、螺旋階段の角から、抜き身の剣の切っ先が閃いた。
続いて、軽装の鎧を身につけた、懐かしい姿が。
「やっぱりここか!」
ガウリイはにこりと笑うと、残りの階段を駆け降りようとしていた。
 


















完結しました。応援ありがとうございました♪
公開を終了しました。たくさん読んで下さってありがとうございました♪

完結までを加筆修正して一冊の本にしました。
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